ヒューマングレードのドッグフードじゃなきゃ危険なの?選び方を解説

食品に対する安全性が高まっている状況下で、ドッグフードの分野ではヒューマングレードに注目が高まっています。
ヒューマングレードとは、人間が食べられる質(安全性)のフードという意味で用いられている用語です。
「人間が口にできるものなら、おいしくて健康的な食品に違いない」と考える方が大半なのではないでしょうか?
しかし、ヒューマングレードについての一般的な理解や認識については不十分な点があるという事実も否めません。
この記事では、ヒューマングレードのドッグフードの安全性・使用する目的・デメリットなどを、ペットフードメーカーの観点から解説します。
1.ヒューマングレードのドッグフードとは?
「ヒューマングレード」のドッグフードとは、近年ペットフードの業界で生まれた言葉です。
- human=人間の
- grade=程度
上記の言葉から「人間が食べられる安全なフード」という意味で、特に日本国内でよく用いられています。
このヒューマングレードについて、掘り下げてみていきましょう。
1-1. 定義は決まっていない
ヒューマングレードには、人間が食べても安全なものという意味はあるものの、明確な定義は存在しません。
例えば、本来の人間用の食品として販売されている食品は、食品衛生法をはじめ、さまざまな規定・規制・法規を満たす必要があります。
ただし、ドッグフードのヒューマングレードが、人間用の食品と同じ規定を満たす必要はありません。
ヒューマングレードは、あくまでもドッグフードメーカーの独自の基準です。
ドッグフードのパッケージに「ヒューマングレード」との記載があっても、商品によって内容や品質は異なります。
1-2. アメリカにおけるヒューマングレードの意味
「ヒューマングレード」の海外での定義について、アメリカでの考え方を確認してみましょう。
前提として、アメリカはペットフードの衛生面や安全性について、かなり厳格に気を遣っている国です。
例えば、感染症対策の総合研究所であるCDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、ドッグフードの安全性に関してweb上でさまざまな呼びかけをおこなっています。
web上に記載されているドッグフードに関する注意喚起
- 消毒や手洗いの徹底
- 生のペットフードは、取り扱いに十分注意して、ドライフードや缶詰などのほかのフードとは一緒に保管しない
- ペットボトルの容器の衛生面に注意
また、ドッグフードの添加物に対しても、基本的に日本より厳しい基準値が設けられています。
このようにペットの安全性について厳しい基準を設けているにもかかわらず、アメリカではヒューマングレードに対して、むしろネガティブなスタンスです。
アメリカでのヒューマングレードは「人間にとって良いフードが犬にとってよいとは限らない」です。
極端な例かもしれませんが、例えば人間にとって無害で栄養の多いタマネギでも、犬にとっては毒になります。
また、アメリカではドッグフードメーカーと獣医師とで組織されているAAFCO(米国飼料検査官協会)が、安全なペットフードに関する基準を設けているため、AAFCOの基準に従うべきという考え方もあります。
ちなみに、日本で用いられている「ヒューマングレード」を表す英語は「edible(食べられる)」です。
1-3. どこに売っているの?
ヒューマングレードと表記されているドッグフードは、市販のペットショップなどで販売されています。
パッケージに「ヒューマングレード」とわかりやすく表記されているため、難なく見つけられるでしょう。
ただし、上述の通りヒューマングレードには明確な基準が定義されていません。
したがって、本来の意味で人間も食べられる食品であるかどうかは、原材料などを見て慎重に判断する必要があります。
実際、本来の意味である人間が食べても問題ないレベルのフードは、市場ではほとんど販売されていません。
2.ヒューマングレード以外のドッグフードと人との食べ物との違いとは?
この章では、一般的なドッグフードと人の食べ物との違いについて掘り下げて解説します。
両者の違いを知ることで、ヒューマングレードのドッグフードの必要性について、理解を深められるでしょう。
2-1. 安全性
ペットフードは、人間用の食品とは異なり、食品安全法が適用されません。
その代わり、ペットフードには「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」が適用されます。
両者を単純比較することはできませんが、基本的に食品安全法の方がペットフード安全法よりも厳しいです。
だからこそ、ヒューマングレードのペットフードが選ばれている面もあります。
2-2. 衛生・配送管理
製造工場での衛生や配送の管理についても、ペットフードと人間用の食品とでは違いがあります。
食品衛生法などにより、管理方法や配送方法に関する規定が設けられている人間用の食品に対して、ペットフードは法律上「食品」として扱われていません。
農林水産省がメーカーに向けてマニュアルを発行していますが、違反時の罰則規定なども設けられていないため、衛生や配送の管理はメーカーの対応次第です。
仮にヒューマングレードのドッグフードを選んだとしても、衛生面の管理などを人間用のフードと同等にしているメーカーは少ないでしょう。
2-3. 食品の使用部位
ドッグフードは、一般的に人間が普段食べない部位のお肉などが加工され、使用されています。
その大半は内臓と端肉です(人が全く食べない部位というわけではなく、ホルモンやウインナーとして消費している部位もペットフードに使用されます)。
人間の可食部を除去した残りの部位を使用しているので、食品の検査基準を満たしています。
人間が食べない=質が悪い
と思われるかもしれませんが、必ずしもそうとは言い切れません。
そもそも人間と動物では、味覚も健康のために必要な栄養素のバランスも異なります。
また、限られた資源を有効活用するという観点でも、人があまり食べない箇所を使用するのはメリットがあります。
3.ヒューマングレードのデメリット
ヒューマングレードについての概要をふまえ、デメリットとなりうる点を3点解説します。
イメージだけで判断せず、正しくヒューマングレードを判断するために、ぜひチェックしてください。
3-1. 必ずしも良いものとは限らない
ここまでの章でご紹介したとおり、明確な判断基準はありません。
したがって、ヒューマングレードをうたっているドッグフードが必ずしも優れたドッグフードであるとは限りません。
例えば、食品添加物に関して、人間への使用を認められている食品添加物が、必要以上に使用されているケースがあります。
安全性が比較的高いものであっても、必要以上に人工の添加物が使用されたドッグフードを選ぶメリットはないでしょう。
ドッグフードの危険性を見極めるためには、原材料表示を意識してチェックする必要があります。
「ドッグフードの原材料を完全解説|安全・安心なフードの選び方」にて、原材料について詳しく案内していますので、気になる方はぜひチェックしてください。
3-2. 食いつきが悪いものもある
ヒューマングレードであっても、愛犬がドッグフードを口にしなくなってしまったら意味がありません。
香料不使用であったり、原材料のお肉の質がよくなかったりした場合に、愛犬の食欲を喚起しないケースが発生します。
長期間にわたり食いつきが悪いドッグフードを与え続けていると、栄養が不足してしまったり、愛犬との楽しいコミュニケーションが損なわれてしまったりします。
3-3. 価格が高い
アメリカのCDCでも大きな問題として、取り上げているのが価格の高さです。
ヒューマングレードに対応するためには、原材料の選定や検査の徹底などにより製造コストが高くなるため、そのほかのドッグフードよりも価格の相場が高くなります。
基本的な目安として、ヒューマングレードのドッグフードは標準的なドッグフードの3倍以上の価格相場になります。
飼い主さんが、価値に見合う価格であると判断して購入する分には問題ありませんが、健康に良さそうとのイメージだけで購入するのはオススメできません。
4.ヒューマングレードを見分ける3つのポイント
デメリットは、飼い主さんにとって大きなリスクだと思われるかもしれませんが、逆に言えばチェックするべきポイントをきちんとチェックすれば、安全性が高いフードを選べます。
ヒューマングレードにこだわるか否かにかかわらず、愛犬にとって本当によいドッグフードを選ぶための3つのポイントを解説します。
4-1. 原材料のチェック
必ずチェックをしたいのは、原材料です。原材料をチェックして、主成分がどのようなものか?どのようなものが配合されているのか?などをチェックできます。
このとき、大切なポイントはドッグフードから良質なたんぱく質が摂取できるか否かです。
良質なたんぱく質は、動物性のたんぱく質から摂取できるため、鶏肉・馬肉・魚などをメインに作られているドッグフードを選びましょう。
また、嗜好性の観点でも良質なたんぱく質が重要で、食いつきの良しあしに大きく影響することがあります。
逆に、注意したいのは穀物です。犬は雑食ですが、穀物の消化はやや苦手なので、穀物の配合量が多くたんぱく質の割合が極端に少ないドッグフードは、体質に合わない可能性があります。
配合バランスの良いドッグフードを選びましょう。
4-2.人工添加物
安全性の観点では、最も入念にチェックすべきポイントは人工添加物です。人工添加物の内容量についても、原材料表示から確認できます。
ドッグフードに使用される添加物の中には、発がん性の示唆されるものや体調不良につながるリスクが懸念されるものもあります。
「ドッグフードは無添加がいいの?健康に良いものとは?」の記事にて、添加物について詳しく解説していますので、気になる方はぜひチェックしてください。
4-3. 価格
価格は、高すぎても安すぎても望ましくありません。
まず価格が高すぎるドッグフードは、長期的に継続できないリスクがあります。
健康を長期的な視点でとらえた場合には、ドッグフードは長く使用続けられるものが望ましいため、飼い主さんの家計を圧迫するドッグフードは避けましょう。
特に、ヒューマングレードのドッグフードの場合、品質が価格に見合っているのかどうかを慎重に判断することも大切です。
反対に、価格の安価なものは品質面で懸念が残ります。
低価格を実現するために、原材料費をカットしたり、適正な管理がされていなかったりする危険性があるためです。
判断が難しいポイントではありますが、ホームページやパッケージをチェックして、信頼に足る情報開示をしているメーカーのドッグフードを選ぶことが重要です。
5.ヒューマングレードにこだわらないドッグフードの選び方
ここまでご紹介したように、ヒューマングレードだからといって、必ずしも安全性が優れているというわけではありません。
反対に、ヒューマングレードのドッグフードは、良くないというわけでもありません。大切なことは、以下の点を意識してドッグフードを選ぶことです。
- 年齢に適している
- 目的に適している
- 個々の好みに合っている
- 水分量の違いによる特徴を意識している
これらのポイントをしっかり押さえれば、愛犬にとって必要な栄養素を摂取して、元気に生活できるでしょう。
「本当に良いドッグフードの選び方とタイプ別おすすめフード5選」の記事にて、本当に良いドッグフードの選び方をご紹介していますので、興味のある方はぜひチェックしてください。
6.まとめ
ヒューマングレードのドッグフードが注目されていますが、明確な定義が定まっているわけではありません。
したがって、ヒューマングレードのドッグフードを選ぶ場合にも、注意してドッグフードの品質を見極める必要があります。
特に、ヒューマングレードのドッグフードにおいて、飼い主さんにとっての大きな負担(デメリット)になりうるのは、価格面です。
ドッグフードが価格に見合うかどうかをチェックするためにも、原材料・人工添加物の確認が非常に重要です。
また、ドッグフードを与える時には、愛犬の食いつきの状況にも注意してください。
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