愛犬の健康・幸福のために理解したい総合栄養食の知識
#総合栄養食 #犬の健康 #犬の食事近年では、ペットの衛生環境や医療体制が整ったため飼い犬は以前にくらべて長生きするようになりました。
だからこそ、従来以上に健康に気を遣うことが重要視されています。
長生きできるのであれば病気やケガをすることなく過ごせた方が、日々の幸福も大きくなるためです。
愛犬の健康維持のために必要なことはたくさんありますが、なかでも重要なポイントの1つが日常の栄養面です。
愛犬が健康を維持するために必要な栄養素を毎日のドッグフードから摂取しなくてはなりません。
一般的に「総合栄養食」のドッグフードを選ぶことで、犬は必要な栄養素の大半を摂取できるとされています。
しかし、「総合栄養食」はメーカーやブランドによって栄養素の内容も大きく異なるため、飼い主様は総合栄養食の正しい選び方を理解しなくてはなりません。
この記事を通して、愛犬の総合栄養食についての基本を学び、愛犬の健康サポートに役立てましょう。
1.総合栄養食とは?
ドッグフードには、「総合栄養食」「間食」「療法食」「その他の目的食」にいずれかの目的が記載されています。
栄養面に配慮したドッグフードを与えるためには、「総合栄養食」を主食としてチョイスすることが大前提です。
このとき、まず総合栄養食がどのようなものなのかを理解することも大切です。
この章では、総合栄養食の概要とそのほかのドッグフードの種類を解説いたします。
1-1. 概要
総合栄養食とは、犬の成長や健康維持のために必要な栄養素を満たしているドッグフードを指します。
一般的に、総合栄養食と水を摂取すれば犬の成長と健康を維持できるように調整されています。
一般社団法人ペットフード協会によると、総合栄養食は以下のように定義されています。
総合栄養食:ペットフードと水だけで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養素的にバランスのとれた製品であって「ペットフード公正取引協議会」の定める栄養基準が定められています。
なお、総合栄養食の基準を満たすために必要な栄養素は、犬種の年齢によって異なる場合が多いため、ペットフードのパッケージにはフードの対象年齢が記載されています。
また、ペットフードのメーカーは基準を満たしていることを証明するために、分析試験と給与試験を実施しなくてはなりません。
参照:一般社団法人ペットフード協会「ペットフードの種類|一般社団法人ペットフード協会」
1-2. 総合栄養食以外のフードとは?
必要な栄養をバランスよく摂取するためには総合栄養食の継続的な給餌が不可欠です。
しかし、ペットショップやオンラインショップなどでは総合栄養食のほかにもいくつかの種類のドッグフードが販売されています。
・一般食
メインもしくはおかず用として作られたドッグフードのうち、総合栄養食以外のものを指します。栄養の量・バランスの観点では総合栄養食には劣る可能性がありますが、一般的に以下の特徴が見られます。嗜好性を意識して作られているため、食欲が減退している犬でも喜んで食いつく場合が多いです。また、カルシウム・ビタミンD・オメガ3脂肪酸など特定の栄養素が多く配合されていることもあります。総合栄養食のトッピングとして使用したり、ご褒美に用いたりするケースが一般的です。
・療法食
病気の治療や症状緩和のために用いられるドッグフードです。例えば、腎臓病対策や皮膚炎対策など特定の疾病などの対応食として用いられます。獣医師の指示に沿って使用されるケースが一般的です。
・間食
間食は、犬が喜ぶように嗜好性が高く作られているという特徴があります。何かのご褒美やしつけのために用いられることが多いです。環境省が発表しているガイドラインでは、おやつによるカロリー摂取は1日の摂取カロリーの20%以下に抑えることが推奨されています。
健康状態・食欲・年齢などに応じて総合栄養食と併用し、愛犬の健康維持・コミュニケーションを図ります。
2.愛犬に総合栄養食を与える際の注意点
愛犬に総合栄養食を与える際には、飼い主様が理解しておきたい注意点があります。
この章では、総合栄養食を与える際の注意点をご紹介します。
2-1. 商品によって含まれる栄養素が異なる
ドッグフードの総合栄養食の成分は商品によってそれぞれ異なります。
「総合栄養食」をうたっている商品は、総合栄養食としての基準を満たしているという点で一定の品質は保たれていますが、必ずしもベストなものであるとはかぎりません。
本当によいドッグフードの具体的な要件をいくつかご紹介します。
- 新鮮なお肉や魚を原材料とした良質なたんぱく質で作られている(低価格を売りにしたドッグフードでは、炭水化物を主原料としている場合もあります。)炭水化物も犬にとって重要な栄養素ですが、肉・魚由来のたんぱく質と比較をすると消化しにくかったり、食いつきが悪かったりするなどのデメリットがあります。原材料の良質なたんぱく質と炭水化物の割合がバランスの良いものを選びましょう。
- 製造・販売時に安全に管理されている(商品が劣化しないようにするためには保存方法も重要です。)管理体制が整っていない場合には、酸化や商品の性質変化により商品が劣化してしまうことがあります。また、ドッグフードによっては愛犬の健康リスクとなる人工の添加物が多量に用いられていることもあります。
これらのポイントは、メーカーや商品の名前だけでは判断がつかないため飼い主さんがドッグフードに関して正しい知識を身につけなくてはなりません。
2-2. 料金と品質・安全性は比例しない
高価格帯のドッグフードや「プレミアムドッグフード」の人気が高まっています。
しかし、価格の高さと商品の品質は必ず正比例するとはかぎりません。
飼い主の立場として気をつけなくてはならないのは、ドッグフードのパッケージ写真や広告コピーの雰囲気だけで商品を選ばないことです。
そのためには、以下の点を注意してチェックする必要があります。
- 原料や添加物の内容
- メーカーの実績や業界内での評判
- メーカーの対応(コールセンターの有無・ISOなど厳しい基準に準拠しているか否かなど)
ご自身で判断が難しい場合には、かかりつけの動物病院の獣医師に相談するのもよいかもしれません。
2-3. 必要な栄養素は年齢や状況によって異なる
犬は、ライフステージや状況によって最適な栄養バランスが異なります。
例えば、子犬や成犬は活動量が多く成長や機能維持のために多くのたんぱく質を必要としますが、活動量が減少する高齢犬の場合にはそこまでのたんぱく質は必要としません。
また、特定の病気にかかっている犬は、栄養素の調整が必要とされます。
多くのドッグフードは、ライフステージ別や症状別にさまざまな種類が販売されているため、愛犬の状態にあったものを選択することが大切です。
2-4. 食いつきも重要
栄養のバランスや管理状況がよく、愛犬にぴったりのドッグフードでも食いつきが悪ければ意味がありません。
毎日必要な量を完食できなければ、結果的に栄養が不足してしまうためです。
犬も人間と同じように個体によってそれぞれ好みがあるため、新しいドッグフードに切り替える時には少量ずつ様子を見ながら切り替える必要があります。
全体的な傾向として、犬が食いつきやすいドッグフードの特徴は以下のとおりです。
- 適切に管理されており、商品が劣化していない(ドライフードの場合、管理状態が悪いと酸化によって風味が落ちます)
- 新鮮なたんぱく質を原料として作られている
- 大きさや形状が犬にとって飲み込みやすい
3.AAFCOガイドラインに見る犬の総合栄養食に必要な栄養素とは?
愛犬の健康にとって栄養バランスが重要なことは理解できても、具体的に必要とされる栄養素やその分量がわからないという方も多いのではないでしょうか?
そこで、参考になるのがAAFCO(米国飼料検査官協会)というアメリカの団体が発表しているガイドラインです。
AAFCOは、ペットフードに必要な栄養素を客観的なデータに基づいて発表している企業で、国際的に信頼性の高い団体であるとされています。
3-1. たんぱく質
たんぱく質は、犬にとって最も重要な栄養素の1つです。
AAFCOのガイドラインでは、以下のように推奨量が規定されています。
子犬: 22.5%以上
成犬・高齢犬: 18%以上
カロリーベースで、ドッグフード中に上記の割合以上のたんぱく質が含まれているものが推奨されています。
たんぱく質の含有量をパッケージにわかりやすく記載しているドッグフードも多いです。
3-2. ビタミン
ビタミンは、生命の機能維持のために必要な栄養素です。
ビタミンA: 5,000IU/kg
ビタミンD: 500IU/kg
ビタミンE: 50IU/kg など
項目が多く、一つひとつ照らしあわせるのは大変ですが、特に重要とされるビタミンD・Eなどの数値をチェックしておきましょう。
3-3. ミネラル
ミネラルは、不足すると疾患や機能不全の原因になることがあります。
ビタミンと同様、ミネラルも項目が非常に多いですが、特に気になる項目の数値を意識してチェックするとよいでしょう。
例えば、カルシウム系の結石症などが気になる方はカルシウムを、腎臓系の疾患が気になる方はカリウムの数値をチェックすると言ったように重要項目をチェックしましょう。
カルシウム: 子犬・成犬:1.2%以上 / 高齢犬:0.5%以上
カリウム: 子犬・成犬:0.6%以上 / 高齢犬:0.6%以上
鉄: 子犬・成犬:88mg/kg / 高齢犬:40mg/kg
3-4. 必須脂肪酸(EPA:DHA)
成長期(子犬期・成犬期)には、EPAとDHAについても必要量が記載されています。
要求量は0.05%です。
4.愛犬に理想的な総合栄養食を与えるためのポイント
愛犬に総合栄養食を与える際には、いくつかの注意すべきポイントがあります。
ポイントを押さえることで、日々の食事での健康維持への注意を高められるでしょう。
4-1. 基本はドライフード
ドッグフードには、ドライフードとウェットフードがありますが、日々の栄養という観点でいえばドライフードを中心に考えましょう。
もちろん、ウェットフードにもメリットはあります。
- 歯が弱くても食べられる
- 食事とともに水分を摂取できる
- 食いつきがよい
ただし、以下の点から毎日の摂取には適しません。
- 例え総合栄養食であっても、ウェットフードのみでは必要な栄養素を十分にカバーできない可能性が高い
- ドライフードよりも高額なので、毎日続けるのが難しい
- 嗜好性が強いため、ウェットフードに慣れるとドライフードを食べなくなる可能性がある
したがって、基本的にはドライフードを与えましょう。
4-2. 炭水化物は消化できる
総合栄養食の栄養素において重要なことは、必要な栄養素をバランスよく摂取することです。
なかでも重要とされる栄養素はたんぱく質ですが、一部にはたんぱく質の重要性を誤って解釈している方もいます。
その誤解とは、以下のとおりです。
・犬は新鮮なお肉や魚でなければうまく栄養を吸収できないため、炭水化物や調理された食べ物は摂取すべきではない
この内容は全くの誤りで、現代の飼い犬は炭水化物や調理された食材を消化して栄養を吸収できます。
むしろ、炭水化物によって効率よくカロリーやエネルギーを摂取することは非常に大切なことです。
「炭水化物=犬の健康にはよくない」とのイメージからグレインフリーの食べ物を購入する方もいますが、グレインフリーの食材は本来、食物アレルギー対策として主に使用されているものです。
ただし、原材料の価格を抑えるために炭水化物の割合を増やしているドッグフードもあり、これらの場合は栄養分が不十分なケースもあります。
「炭水化物=悪」ではなく、個別に栄養の割合をチェックして確認しましょう。
4-3. 食事の回数は1日2~3回が基本
健康な成犬の場合、理想的な食事の回数は1日2~3回です。
決まった時間に食事を取ることにより、生活が安定して1日のリズムが安定します。
また、空腹感が満たされ毎日落ち着いた気持ちで楽しく過ごすことができます。
注意しなくてはならないのは、食事をした直後に運動をしないことです。
特に大型犬では、胃拡張・胃捻転症候群を起こしてトラブルを招いてしまうことがあるため、食後はゆっくりと過ごしましょう。
5.まとめ
愛犬がずっと元気に過ごすためには、毎日のドッグフードの栄養バランスに注意する必要があります。
そのためには、まず総合栄養食を選ぶことが大切です。
ただし、総合栄養食ならどの商品でも問題ないというわけではありません。
個々のドッグフードに含まれる栄養のバランスやメーカーの管理体制などを個別に判断する必要があります。
また、愛犬の食いつきや体調など個体差・体調・状況に応じたフードの選び方も重要です。
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