犬にとってのアミノ酸とは?効果・役割・注意点

アミノ酸は、三大栄養素であるたんぱく質の原材料になる物質です。
したがって、人間と同じように犬にとってもアミノ酸の摂取は極めて重要なことです。
しかしながら、ドッグフードにどのようなアミノ酸がどれだけ含まれているのかを詳しく把握している方は極めてまれでしょう。
むしろ、アミノ酸についてほとんど意識をしたことがないという方が大半だと思います。
結論からいえば、アミノ酸を意識することは健康状態を良好に保つためにも、健康寿命を延ばすためにも大切なことです。
この記事では、犬にとってアミノ酸がどのような意味をもち、どのように作用をするのかについて詳しく解説します。
ドッグフードメーカーとして60年以上の実績をもつ「日本ペットフード株式会社」が解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1. アミノ酸とは?
アミノ酸は、とても身近なものではありますが、やや理解するのが難しい側面があります。
この章では、アミノ酸の基本的な概要や理想的なバランスについて解説します。
1-1. 概要
アミノ酸は、筋肉や臓器などの素になるたんぱく質の構成要素です。
アミノ酸の種類はわずか20種類ですが、その連なり方によって約10万種類といわれるたんぱく質になります。
アミノ酸は、体内で生成できない必須アミノ酸と体内で生成できる非必須アミノ酸に分かれます。
非必須アミノ酸だからといって摂取する必要がないというわけではなく、健康維持のためには20種類のアミノ酸を摂取しなくてはなりません。
アミノ酸の種類は以下のとおりです。
必須アミノ酸
- リシン
- ヒスチジン
- アルギニン
- スレオニン
- イソロイシン
- ロイシン
- バリン
- トリプトファン
- フェニルアラニン
- メチオニン
非必須アミノ酸
- アスパラギン酸
- グルタミン酸
- アスパラギン
- セリン
- グルタミン
- システイン
- チロシン
- グリシン
- プロリン
- アラニン
- (タウリン)
※タウリンは、たんぱく質を構成しないため厳密にはアミノ酸ではありませんが、広い意味でアミノ酸に含められる場合もあります。
アルギニンが必須アミノ酸に含まれている点が、犬と人間との違いです。
必須アミノ酸は、体内で蓄積されないとの特徴ももっています。したがって、毎日の食事でアミノ酸を摂取し続けなくてはなりません。
1-2. アミノ酸スコアとは?
健康維持のためには、アミノ酸をバランスよく摂取する必要があります。
そこで、参考になるのがアミノ酸スコアの考え方です。
アミノ酸スコアとは、その食べ物から摂取できるアミノ酸バランスを数値化したものです。
アミノ酸スコア100が最大であり、数値が高ければ高いほど効率的に体内に栄養を取り込めます。
必須アミノ酸は、まとめて摂取することしかできないため、アミノ酸バランスの低い食材を摂取した場合は数値の低いアミノ酸の分量に合わせてほかの種類を吸収することになります。
アミノ酸スコアが高いのは、お肉・魚・卵などの動物性たんぱく質です。
2. 犬の成長段階|アミノ酸の役割
アミノ酸は、健康維持や成長のために不可欠な存在です。
犬にとっても、成長段階ごとにアミノ酸はそれぞれ非常に大きな役割を果たします。
この章では、子犬・成犬・高齢犬の3つのカテゴリーにおいてアミノ酸がどのような役割を果たすのかについて解説します。
2-1. 子犬にとってのアミノ酸
成長期である子犬は、アミノ酸を最も多く必要とする時期でもあります。
信頼性の高いアメリカのペットフード成分検査機関であるAAFCOが発表しているガイドライン(AAFCO2016)には、必要摂取推奨量が以下のように記載されています。
アミノ酸 | 子犬の摂取推奨量 (1日の摂取カロリーに占める割合) | 成犬の摂取推奨量 (1日の摂取カロリーに占める割合) |
アルギニン | 1.0% | 0.51% |
ヒスチジン | 0.44% | 0.19% |
イソロイシン | 0.71% | 0.38% |
ロイシン | 1.29% | 0.68% |
リシン | 0.90% | 0.63% |
メチオニン | 0.35% | 0.33% |
システイン | 0.70% | 0.65% |
フェニルアラニン | 0.83% | 0.45% |
チロシン | 1.30% | 0.74% |
トレオニン | 1.04% | 0.48% |
トリプトファン | 0.20% | 0.16% |
バリン | 0.68% | 0.49% |
(AAFCO2016)
成長期である子犬の時期にアミノ酸の摂取推奨量が多く設定されているのは、アミノ酸が成長には不可欠なたんぱく質の原材料であるためです。
子犬の時期にアミノ酸摂取量が不足すると、発育不全や体重の減少などのトラブルを招く要因になります。
また、臓器の機能が育たないため病気にかかりやすくなったり、免疫力が低下したりするなどの影響が生じるリスクもあります。
2-2. 成犬にとってのアミノ酸
AAFCOの表からもわかるように、アミノ酸は成犬にとっても引き続き必要とされています。
子犬期に身体的な成長の大半は完了しますが、体調維持のためにアミノ酸は引き続き不可欠だからです。
したがって、アミノ酸バランスのすぐれたドッグフードからきちんとアミノ酸を摂取し続ける必要があります。
必須アミノ酸のなかでも特に意識をしておきたいのはリジン・メチオニン・ロイシン・トリプトファンです。
これらは、お肉や魚などのアミノ酸スコアの高い食べ物には豊富に含まれていますが、穀物や野菜などにはあまり含まれていません。
したがって、ドッグフードの成分によっては、これらは不足しがちになります。
成犬の時期にアミノ酸の摂取量が低下すると、以下のトラブルが起こる要因になります。
- 免疫力の低下
- 爪・被毛・皮膚などにトラブル発生
- 体重減少や体調不良
成犬に対しても、アミノ酸のバランスは慎重に検討する必要があります。
2-3. 高齢犬にとってのアミノ酸
AAFCOは、高齢犬のアミノ酸必要量を特に発表していません。
しかし、高齢犬にとってはアミノ酸は以下の点で非常に重要な栄養素です。
- 筋肉の維持
- 臓器の機能維持
- 免疫力
- 被毛や爪などの機能の維持
ただし、成犬の時期とは異なり高齢犬の場合には過剰摂取についても意識をしなくてはなりません。
アミノ酸(たんぱく質)の過剰摂取は臓器に負担がかかるため、体調や体質によっては取り過ぎない方がよいこともあるためです。
あるいは、臓器への負担を最小限に押さえて効率よくたんぱく質を摂取することも大切です。
3. 犬のアミノ酸(たんぱく質)摂取量について
アミノ酸(たんぱく質)は、不可欠なものではあるものの過剰摂取にも気をつけなくてはなりません。
前章では、年齢別にアミノ酸の必要性についてご紹介しましたが、体調や状況によってもアミノ酸摂取に関する考え方は異なります。
この章では、状況別の犬にとってのアミノ酸の考え方について解説します。
3-1. 積極的摂取が望ましい状況
子犬や成犬は、特段の事情がないかぎり積極的にアミノ酸(たんぱく質)を摂取すべきです。
このとき、注意すべき点は以下のとおりです。
- 肥満に注意する(1日の摂取カロリー目安を守る)
- アミノ酸摂取と合わせて、適度な運動(遊びや散歩)などによって丈夫な身体をつくる
また、がんなどの特定の病気の予防や疾患の症状緩和のためにアミノ酸の積極的摂取が推奨されることもあります。
このとき、市販のサプリメントなどを与えることもありますが、飼い主さんが独自に判断をするのは非常に危険です。
必ず、動物病院の先生の指示にしたがって、サプリメントの与え方や量を決定してください。
3-2. 制限した方が望ましい状況
たんぱく質を制限した方がよい状況も考えられます。
特に注意すべきケースは、以下の疾病に該当するケースです。
- 重度の肝臓病・腎臓病・尿路結石(アルカリ性尿に起因する結石症)
- カロリーオーバー
- 腸内環境が乱れている
これらのケースで、積極的にアミノ酸を与え続けると身体に負担がかかりすぎてしまったり、すでに発症している症状が悪化してしまったりするリスクがあります。
また、手作り食を与えているご家庭の場合は、アミノ酸の過剰摂取になりやすいため、食事のバランスに注意する必要があります。
お肉や魚などをたっぷりと与える場合には、市販のドッグフードよりもアミノ酸の摂取量が多くなりやすいためです。
4. 犬のアミノ酸バランスについて注意すべきポイント
愛犬にバランスよくアミノ酸を与えるためには、以下の点を意識しましょう。
- 良質なたんぱく質(お肉や魚など)をメインの原料とするドッグフードを選択すること
- 毎日のドッグフードの目安分量を守ること
- 体調の異変が生じたり不安に思ったりすることがあれば、すぐに動物病院の獣医師に相談すること
上記を守れば、アミノ酸について日頃意識することがなくても、愛犬は健やかに成長するでしょう。
特に、神経質に何かを意識する必要はありません。
しかし、アミノ酸の分量や与え方は三大栄養素のたんぱく質摂取に直結します。
誤解や不安が生じないように、必ず意識しておきたい注意点を3点まとめてありますので、ぜひ確認をしてください。
4-1. アミノ酸バランス
アミノ酸バランス(アミノ酸スコア)は、ドッグフードのパッケージに記載されているわけではないため、判断しようがないと思われるかもしれません。
しかしながら、アミノ酸スコアが高い食べ物の原材料は限られているため、特に難しいことを考える必要はありません。
- 肉類・・・牛肉・豚肉・鶏肉・馬肉・ささみなど
- 魚介類・・・マグロ・カツオ・サケ・エビ・イカなど
- 卵
- 大豆
- 乳製品・・・チーズ・牛乳・ヨーグルトなど
したがって、基本的なスタンスとしてはお肉や魚を主原料としたドッグフードを与えていれば問題ありません。
ただし、価格があまりにも他と比べて安いドッグフードは、穀物を多く配合することで価格を安く設定できる状態を作っている可能性があります。
ささみ・ジャーキー・チーズなどは、おやつとして与えることも可能です。
このとき、カロリーや塩分についても過多にならないように意識するようにしましょう。
4-2. たんぱく質の過剰摂取に注意
たんぱく質の過剰摂取は、肥満や疾病を招きます。
特に肥満や体調不良の兆候が見える場合や、年齢が高齢にさしかかっている場合には、摂取量にも注意しましょう。
また、腎臓の病気や肥満などにより獣医師からたんぱく質の摂取について指示を受けている場合は、必ず獣医師の指示に従ってください。
- たんぱく質過剰摂取によって起こるトラブル
- 肥満
- 消化器の消化吸収不良
- 腎臓の働きに負担
4-3. サプリメントを摂取する際には獣医師に相談を!
基本的には積極的な摂取が推奨されるアミノ酸ですが、サプリメントで摂取をしたいと考えている方は慎重な判断が必要です。
サプリメントは、成分が凝縮して配合されていることもあり、過剰摂取のリスクに陥りやすいためです。
栄養士関連や動物看護などの知識がある方はある程度ご自身で判断することもできるかもしれませんが、サプリメントを与えるべきかいなかの判断は専門的なので通常は困難です。
したがって、基本的にサプリメントを愛犬に与えたいときは、どのようなサプリメントであれまずは獣医師に相談してください。
また、病気や成長不良の心配がある方は、気にされている悩みと一緒に相談をするとよいでしょう。
愛犬の状況に最適なサプリメントを紹介してもらえるかもしれませんし、あるいはサプリメント以外の対処法についてのアドバイスが得られるかもしれません。
トラブルを避けるために、飼い主さんご自身で判断するのは絶対に避けましょう。
5. まとめ
犬にとっても、アミノ酸は非常に重要な栄養素です。
アミノ酸は、筋肉・臓器・被毛・爪などの主成分であるたんぱく質を構成する物質であるためです。
アミノ酸は、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分かれます。
必須アミノ酸は、体内で生成できず食べ物で摂取することしかできないため、特に意識して摂取する必要があります。
総合栄養食のドッグフードには、栄養バランスが考慮されたうえでたんぱく質が配合されていますが、その配合量やバランスは商品によって異なります。
愛犬の成長や健康維持を考慮する場合、良質なたんぱく質が不可欠です。
大半が穀物で作られたドッグフードではなく、良質なお肉や魚を主原料とするドッグフードを選んで与えるように意識しましょう。
その際、たんぱく質不足にならないように成長段階や体調をふまえて適量を与えることが大切です。
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