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猫に肉を与えてもいい?創業60年のペットフードメーカーがポイント解説

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猫が肉食動物であることは広く知られています。
実際、大半のキャットフードの原料として、何かしらのお肉もしくは魚が用いられています。
では、普段の食事で人用のおかずとして使用しているお肉を猫に提供するのは問題ないのでしょうか?
また、猫にお肉を与える場合には、どのような点に注意し、どのようなお肉を与えれば良いのでしょうか?
この記事では、猫にお肉を与えるべきか否かについて、創業60年のペットフードメーカーがポイントを分かりやすく解説しています。

1. 猫に肉を与えても大丈夫?

お肉は、猫にとってとても貴重な栄養源です。

お肉を主原料とするキャットフードが多いことからも分かるように、猫にお肉を与えても基本的には問題ありません。

ただし、食材としてのお肉を愛猫に与える場合には、お肉の種類・与え方・分量などについて注意しなくてはなりません。

例えば、生のお肉を与えると細菌やウイルスに感染するリスクがあるため、非常に危険です。

また、人間用に味付けされたお肉は、塩分過多などの健康上のデメリットが大きくなります。

その他、お肉と一緒に他の食材を調理する場合や、レバーなどの脂の多い部位を与える場合など、状況にあった注意をする必要があります。

注意点をしっかりと押さえたうえで、安全な栄養摂取を意識することが重要です。

2. 猫に肉を与えるなら生肉と調理された肉のどっちがいい?

猫に肉を与える場合、生のお肉は要注意です。

原則としては、加熱調理済みのお肉を与えましょう。

この章では、生肉と調理した肉の、猫の体にとってのメリット・デメリットを解説します。

2-1.  猫に生肉を与えるのは大丈夫?

肉食動物である猫は、理論上は生のお肉を食べても問題ありません。

野生の猫が好むからか、生肉の方が調理済みのお肉よりも食いつきが良いこともあります。

実際に、生のお肉ならではの猫にとってのメリットがあるのも確かです。

生のお肉のメリットは、酵素がふくまれていることです。

酵素は、猫の胃腸の働きを整える働きがあり、栄養の吸収に良い効果をもたらすこともあります。

酵素はもともと猫の体内に少なく、また加熱済みのお肉からは摂取できません。

さらに、生肉は猫にとって吸収しやすいというメリットもあります。

しかしながら、生のお肉には大きなデメリットもあります。

鳥・牛・豚の種類にかかわらず、生のお肉には細菌やウイルスが潜んでいるケースが少なくありません。

衛生面に配慮されているスーパーマーケットなどで市販されているお肉や、通販などで販売されている冷凍のお肉であっても、感染リスクがあります。

猫が細菌やウイルスに感染をすると体調を崩してしまうだけでなく、飼い主さんにうつる可能性もあります。

感染症の症状は、軽いケースでは下痢や吐き気などです。

細菌・ウイルスの種類やもともとの体調・体質次第では命に関わることもあるため、飼い主さんがご自身の判断で生のお肉を与えるのは避けるべきでしょう。

2-2.  猫に調理した肉を与えるのは大丈夫?

猫にお肉を与えるなら、基本的には加熱をして与えましょう。

その最大のメリットは、安全にお肉を与えられることです。

加熱をすることで、細菌やウイルスが死滅するため、生肉を食べたときの最大のデメリットである感染症リスクは大きく軽減できます。

ただし、加熱をすることで生肉のメリットである酵素の摂取はできなくなるため、要注意です。

また、加熱した肉であれば無条件に与えても良いわけではありません。

例えば、人間の料理に使用するソース・しょうゆ・ケチャップ・塩こしょうなどの調味料は塩分や添加物が多いため、腎臓やその他の内蔵機能への負荷が大きいでしょう。

3. 猫に肉を与えるメリット

この章では、猫にお肉を与えることのメリットについて改めて考えてみましょう。

基本的に、猫は必要な栄養素の大半をキャットフードから補うことが可能ですが、お肉の方が嗜好性が高い場合もあります。

その結果、猫に取って必要な栄養素を、補える場合があります。

3-1.  たんぱく質の要求量が多い

肉食動物の猫は、人間に比べてたんぱく質の必要量が多いという特徴があります。

環境省が発行している「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」によると、人間のたんぱく質必要量が18%であるのに対して、猫のたんぱく質必要量は35%です。

多くのたんぱく質を摂取するためには、たんぱく質を豊富に含んだフードを摂取することが最も効果的です。

炭水化物や野菜などをメインとする食事では、猫が必要とするたんぱく質をしっかりと摂取するのは困難でしょう。

たんぱく質の含有量は、お肉の種類によって異なりますが、一般的にキャットフードの主原料としてよく用いられている鶏肉は、良質なたんぱく質をバランスよく含んでいます。

3-2.  魚よりも毎日の食事に適している

鶏肉と並んでキャットフードの主原料に用いられているのは、カツオやマグロなどの魚です。

むしろ、猫はお肉より魚を好むと考えられている方も多いかもしれません。

魚はタンパク源としても栄養のバランスの観点からも猫にとって最適な食材の一つです。

それでも、毎日食事をするという観点で言えば、魚よりも肉の方がすぐれているといえます。

なぜなら、魚には脂肪酸が多く含まれているためです。

脂肪酸は、猫のビタミンEの吸収を阻害してしまう可能性があります。

ビタミンEには、強い抗酸化作用があるので、炎症やさまざまなトラブルから身体を守る役割があります。

ビタミンE不足によって生じる具体的な症状は、以下のとおりです。

  • 筋力低下
  • 生殖障害
  • 網膜変性
  • 脂肪組織の変色
  • 皮膚炎
  • 免疫系の異常

魚を主原料とするキャットフードは、さまざまな栄養素が配合されており、これらのデメリットもフォローされていますが、食材としてお肉とお魚をそれぞれ単体で比較した場合はお肉の方が毎日の摂取に適しています。

3-3.  偏食の対策になる

猫に、お肉を与えることで偏食の対策になることもあります。

猫は、とても好奇心が強い反面、警戒心が強い動物でもあります。

食べたことのない食感・におい・形状のものを口にしたがらない傾向があるため、与えるフードのバリエーションを増やすことは大切です。

特に、子猫のうちにさまざまなフードを口にしていると成猫になってからも警戒心が薄れやすいため、フードのバリエーションの一つとして栄養価のすぐれたお肉を与えることはとても効果的です。

4. 猫に与える肉の種類

一口に「お肉」といっても、その種類はさまざまです。

そして、お肉の種類によって当然ながら含まれる栄養素は異なります。

この章では、お肉の栄養素ごとの特徴を解説します。

4-1.  豚肉

豚肉は、入手のしやすさや価格の安さという点で魅力的な食材です。

たんぱく質やビタミンB群を豊富に含んでいるというメリットもあります。

ただし、一般的にナトリウムと脂肪を多く含んでいるというデメリットがあるため、猫にとっては理想的とはいえません。

ナトリウムの過剰摂取は、高ナトリウム血症による腎臓の不調(喉の渇き・多飲多尿など)につながります。

また、脂肪を多く吸収すると、肥満リスクや動脈硬化のリスクが高まります。

豚肉を猫に与える際には、必ず適量を加熱して与えるよう徹底してください。

生の豚肉を与えるとトキソプラズマ症という寄生虫感染のリスクがあります。

トキソプラズマ症は、猫の便などを通じて人間にも感染するリスクがあり、妊婦の方に感染すると流産を招くこともあります。

目安の分量は、薄いお肉を2~3cm程度です。

4-2.  鶏肉

鶏肉は、最も多くキャットフードに使用されているお肉です。

多くの猫が好んで食べる肉でもあり、また栄養バランスも非常に優れています。

特に猫にとって栄養バランスが優れているのは、高たんぱく・低脂肪のささみです。

ただし、ささみであっても生のものは細菌が含まれていることがあり、下痢や吐き気の原因となる場合があります。

必ず、加熱をしてから与えるようにしましょう。

また、人用の食事を猫に与える際の注意点として、ニンニク・タマネギ・香辛料などで調理された料理は猫の健康被害を引き起こすリスクがあるため、与えるべきではありません。

鶏のささみを猫に与える場合の目安の分量は、3cm程度です。

4-3.  牛肉

新鮮な赤身の牛肉は、猫にとって望ましい食材です。

必須アミノ酸や猫にとって必要な栄養素が豊富に含まれており、たんぱく源としても体調を整えるための食事としてもすぐれています。

また、牛肉に関しても生のまま与えると細菌感染のリスクがあります。

豚肉と比較をするとリスクは小さいですが、牛肉にはサルモネラ菌や大腸菌が繁殖している場合があり、猫が下痢や吐き気などを起こす可能性があります。

牛肉を与える場合の1日の目安は、薄い肉を2~3cmです。

4-4.  レバー

レバーは、少量であれば猫にとって有益な栄養源です。

ビタミンAの摂取は、皮膚のターンオーバーをサポートする役割があるからです。

ただし、ビタミンAは過剰摂取すると骨の病気を引き起こし、最悪のケースでは死に至ることもあります。

また、レバーは脂肪分を多く含んでいる点にも要注意です。

レバーの許容量は多くないため、ごくまれに少量を与えるようにしましょう。

4-5.  加工肉

人用のウインナーやハムなどの加工肉は、原則としてNGです。

なぜなら、人間用の食品のなかでも特に塩分や添加物が多いためです。

継続的に与えていると、腎臓などの内蔵機能に大きな負荷がかかり、結果的に体調を悪くするでしょう。

ただし、猫用のジャーキーなどでしたらおやつとして与える分には問題ありません。

分量に注意し(1日のカロリー摂取量の10%以下程度)、おやつやご褒美として与えてください。

5. 猫に肉を与える際の注意点

猫にお肉を与える際には、いくつか注意点もあります。

この章では、猫に肉を与える際の注意点をご紹介します。

5-1.  必ず調理してから与える

衛生的に管理された店舗で購入したお肉でも、生のお肉には細菌やウイルスが繁殖している可能性があります。

冷凍してもすべての細菌やウイルスが死滅するわけではないため、必ず加熱調理をしてから与えるようにしましょう。

感染症は、愛猫の健康を損なうだけでなく飼い主さんやその家族の方にも被害が生じるリスクがあります。

細菌の種類によっては、猫には症状が現れないものの人にとっては危険なものもあるため、安易に生のお肉を与えないでください。

5-2.  他の食材・ソースに注意する

人間用の食事を猫に与えるときに注意をしなくてはならないのが、他の食材やソースです。

猫に与えてはならない食材・ソース・香辛料・・・摂取時のリスク

  • タマネギ・ネギ・・・下痢・嘔吐・発熱・貧血
  • エビ・イカ・・・下痢・嘔吐
  • 骨付きの肉・・・喉や消化器官の穿孔によるケガ
  • ブドウ・・・腎不全の原因
  • 香辛料・・・肝機能障害
  • ホウレンソウ・・・尿石症
  • 生の豆やナッツ類・・・下痢や嘔吐
  • にぼし・海苔・・・下部尿路疾患
  • ソース全般(醤油・ドレッシングなど)・・・塩分やスパイスによる腎臓への負担

基本的に、猫にお肉を与える際には、味付けをせずに茹でたり蒸したりする調理法がオススメです。

5-3.  生肉を与える場合は鮮度が重要

生肉をどうしても猫に与える場合には、鮮度が非常に重要です。

必ず、飼い主さんご自身では判断せず、お肉の安全な管理が保証されている場合にのみ、与えるようにしましょう。

鮮度の悪い生肉は、風味が落ちるため猫にとってもあまり喜ばしい食材ではなくなります。

できれば、獣医師などの専門家の指示・アドバイスのもとでどのようなお肉をどのように与えるかを判断してください。

6. 猫に手軽にお肉を与えるための方法

この章では、猫に手軽にお肉を与えるための方法を解説します。

スーパーマーケットや精肉店のお肉にこだわらなくとも、安全にお肉を与える方法はいろいろあります。

6-1.  質の良い肉を主原料とするドライフードを与える

市販されているキャットフードの主原料は、一般的にお肉・魚・穀物です。

特にすぐれたキャットフードは、新鮮なお肉を主原料として使用しています。

ただし、パッケージだけを見るとどのフードも新鮮なお肉や魚を原料として作っているようにデザインされているため注意が必要です。

裏面の原材料表示やたんぱく質含有量などを確認するとともに、愛猫の食いつきの良さなどを確認して、フードを決定しましょう。

6-2.  ウェットフードを与える

ウェットフードは、お肉などの食材をそのままいかして作られたものが多いです。

また、真空パックや缶詰など、新鮮な状態で小分けにして作られているものが多いため、手軽に新鮮な状態でキャットフードを与えられます。

6-3.  コストパフォーマンスにすぐれたフードを選ぶ

お肉を猫に与えようとする際に、ネックになりがちなのがコストです。

価格の高いキャットフードは、継続的に購入するのが難しいためです。

高価なキャットフードしか愛猫が食いつかなくなってしまったら、後々のご自身を苦しめることにもなります。

したがって、新鮮なお肉を主原料としながらも価格の安価なキャットフードを吟味することが大切です。

7. まとめ

猫にとってお肉に含まれるたんぱく質は、とても重要な栄養素です。

感染症リスクや栄養の偏りなどに注意が必要であるものの、お肉は猫にとって魚以上に毎日の食事に適した食材であるといえます。

しかしながら、最も栄養バランスが取れているのはキャットフードです。

コストパフォーマンスの面を考えても、猫にとってキャットフードほど理想的なものは他にありません。

毎日の食事はキャットフードを基本としつつ、ご褒美やおやつの際に、与え方や適量をまもったうえでキャットフードを与えるのが理想的なかたちです。

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